日本の食卓らしさを
体現した小さな器。
タレ入れ:春菊 招き猫 / 醤油差し:醤油差し / お酢:復刻 醤油差し(籠目) / 醬:キャニスター 小・キャニスター 蓋 /取り皿:丸鏡 五寸 赤輪 / お盆:お盆 小 鍍銀
「春菊」は、もともと和食の席で塩や薬味を少量添えるための「お手塩皿」と呼ばれる器。
かつては武家や格式ある食事の場で、手を清めるために塩を盛ったり、調味料を少しずつ出すために使われてきたそうです。
ガリ・漬物:春菊 三福神 / お重:隅切二段重 (白)
直径およそ59mm。取り皿にするには小さすぎるこのサイズが、私は“日本の食卓らしさ”を象徴しているように思います。
完全に持論になりますが、少しだけお付き合いください。
まず第一に“一汁三菜”という言葉がある通り、日本の食卓には昔から「小さく分けて整える」という文化があります。
ひと皿に盛るのではなく、少しずつ複数の器に分けて出す。薬味だって塩ひとつだって、ちゃんとひとつの器に入れて食卓に出す。
その丁寧さや心づかいを、こうした器が体現しているような気がするのです。
次に”個人の味”を大切にするところ。
また、誰かは醤油にワサビを、別の誰かは辛子を溶かしたい。
それぞれの好みに合わせて“自分だけの味”をつくれるのも、こうした小さな器があってこそ。
同じ食卓を囲みながら、それぞれが自分の“おいしい”を見つけられる。
それを自然なこととして受け入れてきた背景が、この器に映し出されいているように感じるのです。
波佐見の老舗窯元からお届け
製造元は長崎県波佐見町にある、1982年創業の老舗窯元「光春窯(こうしゅんがま)」。
素材に使われているのは、熊本県・天草地方で採れる「天草陶石」。
磁器の原料として名高く、焼き上がりは硬く、白く、なめらかなのが特徴です。
そんな上質な素材をベースに、縁をぐるりと囲む赤い輪線や絵柄の転写・仕上げまで、すべて手作業で行われています。
皿のかたちは、菊の花びらを模した波のような縁取り。
製造元の「光春窯」の“春”と、菊の意匠から「春菊」と名付けられました。
福を呼ぶ、二つの絵柄
皿:丸鏡 五寸 (赤輪) / 醤油皿:春菊 招き猫 / 醤油差し:醤油差し / 箸:竹箸(元節) / お盆:お盆 小 鍍銀
「春菊」には、2種類の絵柄があります。
「5匹の猫が1匹ずつ描かれた「招き猫」、そして3柱の神さまが登場する「三福神」。
「縁起のいいモチーフを、直径わずか5.9cmの器の中にぎゅっと閉じ込めています。
招き猫は、それぞれ異なるポーズと模様の5匹。
手を挙げて人や運を招く仕草は、商売繁盛や金運の象徴として古くから親しまれていますが、この器に描かれた招き猫はと、それぞれが“日々の福”を象徴しているそうです。
※うんちくゾーン:上段左からハチ、マル、タマ、ミーコ、ユキと名前がついているのですが、私なりに調べたところ
マル:福をキャッチしようするポーズから「金運招来」「商売繁盛」 / タマ:新しいチャンスに気づいている目線から「チャンスの兆し」 / ユキ:”白猫=幸運・清らかさ”の象徴から「家庭円満」「平穏無事」 / ミーコ:「幸運」の象徴である三毛猫 / ハチ:”顔を洗う=災いを祓う”というイメージから「厄除け」「無病息災」だそうです。ご自身が使う時のちょっとしたお楽しみ、もしくはどなたかのプレゼントへする際のうんちくに使ってください。
もうひとつの「三福神」とは、七福神の中から特に人気の高い三柱を選んだ組み合わせ。
農業・食物・財運を司る福の神「大黒天」、商売繁盛・漁業の神様「恵比寿」、「福(幸福)」「禄(財運)」「寿(長寿)」を授ける神として信仰されている「福禄寿」。
そう、つまりこの三人さえいたら、もう十分すぎるくらいの福に囲まれている、というわけです。
そんなありがたい三柱が、小さな手塩皿のなかに、丸みを帯びた素朴なタッチで描かれています。
堅苦しさはまったくなく、むしろどこかユーモラスで、親しみのわく表情と佇まいで、“身近な福のかたち”として存在してくれます。
テキスト:Moe Kuriyama(
@moe__meshi_)
写 真 :Yuto Tenjin
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