木そのものの美しさを味わう、
白鷺木工の原点。
ろくろ挽物で国内トップクラスの技術を誇る石川県山中の白鷺木工さん。
原木の加工から仕上げ挽きまで一貫して手がけるこの工房で、最もベーシックな存在として生まれたのが「しらさぎ椀」です。
特別な装飾はなく、形もごくシンプル。
けれど、だからこそ際立つのは木そのものの表情。
桜、欅、栗、楓、楢――、それぞれ異なる木目や質感が、ひとつひとつの椀に個性を宿しています。
SHIRASAGIのお椀すべてに共通するのは、贅沢な「縦木取り」。
輪切りにした木の断面をカットして使用することで、木目が均一で歪みにくく、耐久性にも優れています。
この素朴さと確かな作りが、飽きることなく長く使い続けられる理由なのかもしれません。
木目の温もりか、
漆の深みを取るか。
ナチュラルタイプは、木の温もりをダイレクトに感じられます。
触れるとほんのりと優しい木肌の感触が手に伝わり、使うほどに味わいが深まっていきます。
一方、黒・赤・茶の漆塗りタイプ は、「拭き漆」という塗っては拭き取る工程を繰り返し、木に漆をじっくりと染み込ませる製法で仕上げています。
マットな質感が、木目をより引き立て、同じ木でもまた違った表情を見せてくれるのです。
-楓(かえで)。:ナチュラル仕上げのみの「楓」は、きめ細かく滑らかな木肌。淡く繊細な木目は、清潔感のあるすっきりとした印象を与えてくれます。
-桜(さくら):きめ細やかでやわらかな木肌の「桜」は、漆を塗ることでしっとりとした滑らかな質感に。木目は控えめになり、穏やかで落ち着いた雰囲気が生まれます。
-楢(なら)。:硬質で優れた耐久性を持つ「楢」は、細かい導管が生み出す独特のテクスチャーが特徴。漆を施すことで木目がくっきりと浮かび上がり、無骨さの中にも洗練された趣が漂います。
-欅(けやき)。:はっきりとした年輪が特徴な「欅」は、漆を施すことで木目のコントラストが一層鮮明に。木そのものの生命力と漆の上品な艶が重なり合い、堂々とした風格を感じさせてくれます。
-栗(くり)。:素朴で温もりを感じさせるやさしい木目と、ほんのり赤みがかったブラウンの色味の「栗」。漆を重ねることで木目の濃淡が際立ち、自然な風合いに深みが加わります。
"使い艶"についてと
天然木だからこその注意点。
お手入れについてですが、電子レンジ・食洗機・オーブンは非対応になります。
つけ置きも控え、使用後はすぐに洗って水分を拭き取ってあげてください。このとき花ふきんなどなるべく柔らかい布を使用するのがおすすめです。
毎日使って、洗って、拭いて、を繰り返すことで漆にとっての快適な環境をキープできるだけではなく、漆の表面の粒子が削れ、独自の艶感を出すことができます。
ちなみに使い続けることで生み出される艶は「使い艶」ともいい、塗りたての漆とは一味違うそうな。
また、比較的均一な木目になりやすい「縦木取り」とはいえ木にはそれぞれに個体差があります。
同じ種類の木であっても 色味や木目が違ったり、節や傷が器の表面に表れてくることがありますが、これらは木が長い年月を過ごしてきた証です。
自然が創り出すふたつとない天然木ならではの柄を楽しんで、使い艶が出るまで愛していただけると幸いです。
料理・文:栗山 萌
写 真 :天神 雄人
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