玉子焼きを極めたい、
あなたへ。
だし巻き卵を極めたい。そんな時期がありました。
何事もまずは道具から入るタイプなので「一番いいものを!」と調べていくうちに辿りついたのが、今回の木屋さんの玉子焼きフライパンの製造元である「中村銅器製作所」の銅製玉子焼き器でした。
理由はとてもシンプル。お寿司屋さんがこぞって使っていたから。
調理道具を買うときは、基本的にその道のプロと同じものを選びたくなる性分なのですが、今のところそれで失敗したことはありません。
中村銅器製作所では内側に「錫の焼き付け」という技法が使われています。
これは、錫のインゴット(錫の塊)を鍋の内側で直接溶かし、真綿で素早く塗り広げるというもの。
高温で熱した銅板に手作業で錫を焼き付けるため、温度管理・塗りムラの調整など、すべてが職人の腕にかかっています。
この錫の層が、銅の熱をほんの少し和らげてくれるおかげで、鍋全体がじんわりとあたたまり、玉子にもふっくらと均一に火が入ります。
さらにくり絵師使うほどに、「皮膜」と呼ばれる自然なコーティングが育ち、焦げつきにくくなる効果も。
実際、焼き重ねるごとに卵焼きの仕上がりが滑らかになっていくような、そんな実感が間違いなくあるのです。
流し込んだ卵が、ふつふつと音を立てて、やがて表面がすっと固まりはじめる。
その変化が目で見てわかるようになったころには、箸を入れた瞬間、するりと剥がれる心地よさも感じられて。
手と道具がぴたりと合わさって、自分の「玉子焼き」が出来上がっていく充実感は、完成の味以上に心を満たしてくれるものでした。
家庭の味に
合わせて選ぶ。
「東型」と「西型」、それぞれ大小の計4サイズがあります。
ご家庭の味や使い方に合わせて、ぴったりのかたちをお選びください。
「東型」は味付けが甘めで、出汁は少なめか無しの関東風だし巻きに。
東型は関東風で、正方形。丸く整った形に仕上がるので、お弁当や朝食用のきれいな厚焼きにぴったりです。
一回に流し込む卵液の量はやや多めくらいでいいので、ひっくり返す回数は少なめです。
150×150mmサイズは卵2〜3個向き。
180×180mmなら、3〜4個でたっぷり作りたいときにも。
一方、「西型」は昆布やかつおのだしをたっぷり使い、甘さ控えめな関西風のだし巻きに。
ふっくらした巻きの層がつくりやすく、出汁をたっぷり含んだだし巻きが好きな人におすすめです。
120×160mmで2〜3個、135×180mmで3〜4個が目安です。
ちなみに「関東巻き」は奥から手前に向かって巻いていきますが、「関西巻き」は、手前から奥に向かって巻くのが主流だそう。
隙間が生まれにくく、よりみちみちに詰まった出汁巻きを作ることができます。
私の黄金比と、
巻き簀のすすめ。
何度も試した結果、いまのところのベストバランスは卵4個に対して出汁が120cc、味醂と醤油が7gずつと塩ひとつまみ。(巻きやすさを重視するなら80cc〜100ccくらいがいいかもしれません。)
だしは鰹でとるとぐんと旨味が増しますが、だしパックでも十分美味しくできます。
焼く前に濾すと、より見た目も綺麗に、しっとりとした舌触りに。
最初のうちは、油気持ち多めが安心。
都度足して、キッチンペーパーで軽く拭って、を繰り返すことでひっつきません。
だしが少し多めの配合なので、巻き簀はマスト!
焼きたての玉子を巻きすの上に置いて、軽く包み、ぎゅっと締めすぎないように巻いていく。
とじ目を下にして少し置いておけば、形がきれいに整います。
はじめのひと手間、
「油ならし」
銅の鍋は、使う前に“油ならし”という作業が必要ですが、それほど難しいことはありません。
まずは、洗剤は使わずに水洗いし、しっかりと水気をふき取って乾かします。
次に、鍋7分目を目安に油を入れて火にかけ、キッチンペーパー等で鍋内面周りを軽くこすりながら弱火で4~5分煮たら完了です。
いきなりだし巻きを焼くのではなく、最初は卵が浮くくらい多めの油で、出汁なし卵を焼くとより馴染みが良くなります。
日々のお手入れも、皮膜を落とさないようなるべく洗剤を使わず、柔らかめのたわしやスポンジで擦るだけ。
しっかり水気を拭き取ってから、油を軽く全体に馴染ませてからしまいましょう。
料理・文:Moe Kuriyama(
@moe__meshi_)
写 真 :Yuto Tenjin
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